本革

知人の会社が高校生の求人に苦労している、と世話好きなKさんより。知名度こそ乏しくもある分野において高い技術力と堅実な経営を誇る会社とて少なからず。就職難の中にあって需給のミスマッチは何とも惜しく。
いつぞやに作業着メーカーがランドセル市場に参入、と見かけた。ハレの入学式に見比べる隣りのランドセル。劣らばイジメの原因にもなりかねず、せめて平均的な一品を、と値札見るに。本革製と申しても実用性は別。今や教科書など全て持ち帰りが原則だそうで。安くていいもの、が消費者の心理。風穴あけんとの着眼や悪からず、か。
ゴルフなど見栄の張り合い。されど、一流ブランドに身を包みし御仁が必ずしも腕達者とは限らず。その起源や羊飼いの石ころゲームとされる中にあって、んな排他的にならずとも。とはいえ、求められる最低限の品位。せめてそれなりの身なり整えんと店を物色するに総じて割高に見え。
ランとて以前は手軽なスポーツの代名詞だったはずなれど、今やゴルフに勝るとも劣らぬ。ウェア代ばかりかレースへの出走料とて。いや、こちとてそこまでケチるつもりはなくともさすがに。ロゴの有無にそれだけの価値があるようには。
そう、ランドセルのみならず、こちらも作業着メーカーの品揃えが充実。雨風に炎天下の過酷な状況下に身体を酷使するに少しでも快適な品を。そんな彼らの声に応えるべく追求された機能性は他の追随を許さず。通気性に軽量感、ポケット一つ見ても。欠けるデザイン性も今や。いやほんとに企業努力が窺い知れて。
閑話休題。障害者の支援を手がける事業者から説明会を催すゆえ、と誘いをいただき。開催は義務にあらず、やるは当事者の勝手なれど、やるに生じる手間や軽からず。求人じゃあるまいに、やらずと利用者には不自由しとらぬはず、やる意味やいかに、と聞かば。顔が見えることが生む安心感、利用者との信頼関係を築くに欠かせぬ、と。
そんな事業者が新たに参入するは相談支援。現行、相手の依頼に応じて事業所を紹介する流れの中にあって、本来ならば症状の改善に目指されて然るべき本人の自立のはずが、「受入」が優先されるあまり、「質」がおざなりにされることも。中には「とりあえず預かってくれれば」なんて保護者がいないとも限らず。いや、それすらも利用者の選択なれど折角の機会を失うは何とも惜しく、現場に身を置く当人としては歯がゆき想いを抱くのだとか。
肝心の役所とて事業者の運営が適正になされていればそれ以上はあえて求めぬ。ひと昔前ならばこれだけの数ある中にいちいち特定の事業者の話など聞いていられるか、事業者たるもの余計なことはせずに「つつがなく」言われた通りに、なんて風潮だったはずが。こと最近はそんな事業者の声とて聞く耳を立ててくれる職員もおられるらしく。庁内にあってそんな姿勢や周囲から疎まれるやもしれぬ、が、ふんぞり返っているだけでは現場の本音は聞けぬ。成功はごみ箱の中に、きっと損にはならぬし、そのへんに活路があるはず。
(令和6月4月20日/2848回)