尻餅

その出で立ちやどう転んでも市議には見えぬ、と事務員。いや、こちとて週明けの月曜とあらば何かと対応に追われがち、朝イチの便にて現地から戻っただけの話。仕事に服装は関係なく、とりあえず、その格好のまま。
それはレースに限った話になく。癖とは抜けぬものにて、ひとたび棄権すれば次回も「まっ、いいか」なんて。とにかく前回が誤算。上がる難易度にこんどこそ失敗は許されぬとの重圧。雨の日とて休む訳にはいかぬ、と性懲りもなく。発熱なくも咳が止まらず。夜などとりわけひどく、寝不足が続き。治るに治らぬ咳の原因はもしや。
止まらぬ咳に呼吸すらままならず、遠のく意識。こう見えて小児ぜん息の重症患者にて当時は本当にこのクスリに救われ。以降、捨てるに捨てれず。そんな昔のクスリがよく効いたな。
んな状況下に挑むは40kmのトレイル。舞台や北九州の平尾台。大自然が織りなす景観。カルスト台地に不思議と生まれる一筋の道。本来ならば眼下に広がる雄大な自然、のはずが当日の天候や雨、ばかりか霧に視界晴れず。どろんこレースの様相にて。
滑って転んで尻餅ついて。用意されたロープ手繰り寄せて斜面上がらんとするも足をとられて。それでもロングの部、出走400名を超える中にあって着順143位は総合順位であって、年代別ならば表彰台、そりゃないナ。
距離に難易度、制限時間は前回以上にあって完走を果たすに改めて顧みるは前回の敗因。どれだけ立派な車体に高性能なエンジンを搭載しても肝心のガソリンなくば。人の生存に欠かせぬは水と知るべし。
絶景こそ見逃せど補って余りあるはスタッフの親切心。完走証が雨にぬれてはと手持ちのビニール袋に包んで下さった係員。雨の中、どろんこまみれにてゴールするに、この期に及んで見てくれなど気にせぬ、が、当日の移動手段やレンタカーにてさすがにそのままでは。シャワーなどあるはずもなくトイレの洗面所とて手洗い専用。そこに居合わせるは清掃員の女性。水道に手持ちのホースを繋いでくれて。手袋のままで申し訳ないと詫びつつきれいに洗い流して下さり。あとはタオルで。本当に助かった。
そう、最近の相談の一つに公園トイレがあり。当該の公園は高齢者の方々の利用多くも不自由するはトイレ。あるにはあるのだけど、男女とも和式ばかりか目隠しなく。何せ老齢にてふんばりが効かぬ。人目につかぬ向きとはいえどさすがに丸見えは。
ならば自宅で、というけれども年齢とともに間隔狭くなるは生理現象。そればかりか、そこまで我慢できぬ、失禁とて少なからず。尿漏れなどズボンにシミを作っては。こと近年は紙おむつの向上が著しく、利用する高齢者も多いとか。
さりとて、履き替え後、捨てんとするに入れ物なく。持ち帰るにはさすがに。せめて専用の容器でも、とは切実な願望であって。現役世代には思い及ばぬ悩み。気づかぬは仕方あるまい。されど、誰しもがやがてはその年齢を迎える訳で。せめて、話を聞いた以上は。
(令和6月4月25日/2849回)
大会名:北九州・平尾台トレイルランニングレース2024
ロングの部40km/累積標高2,488m/制限時間7時間30分
順位143位(出場者433名/完走者288名)