遡及

シーズンの開幕ならぬ完成後のこけら落とし。始球式のマウンドに立つは副市長、と聞いて「待った」をかけた。横取りこそせぬも稀代の晴れ舞台にて何も身内が占めずと他に適任者はおらんのか。話題の女優か若手アイドル、と言いかけて隣の副議長に遮られてしまったものの深淵な意図だけは酌んでいただいたらしく、直前に選手交代の報を聞いた。御当地の小さなエースの抜擢に降板を余儀なくされた御仁は不貞腐れておらぬか、と詰問すればむしろ御満悦と。そうでなきゃいかん。

往年の夢よもう一度、プロ野球とは参らぬまでも夢と感動の舞台を再現すべく全面改修を終えた等々力球場。そんな夢舞台の完成に花を添えるべく本市と縁ある企業の全面的な協力を得て実現した屈指の好カードは東芝vsENEOS。エースのファンか試合見たさか、制限されし千名の枠に七千名もの応募があったとか。

さて、読者諸賢は市長の手紙ならぬ議長への手紙を御存知か。いや、正確を記せば市議会宛の投書箱なるものがホームページの隅に置かれていて。あくまでも市議会に対する声とされているものの、実際は市政に対する御意見が大半を占める。市長への手紙と申してもあれだけの数が殺到すれば一字一句の確認まで目が行き届かぬこともあるやもしれぬし、当事者側として返答に窮することも無きにしも非ず。

こちとらは役所の監督を本分とする以上、より贔屓目な目線にて返答が出来そうなものの、厄介なことに議会なるものは合議制にて議長の一存が総意を意味するものでなく。個別の回答はせぬ旨はちゃんと明記されているものの、それでも聞いて欲しいとの依頼主の声は切実であって、そこに時間を費やしていただいた手間を鑑みれば無視は出来ぬ。決裁箱に積まれる投稿を興味深く目を通しておるのだけれども最近の一つにこんなものを見かけた。

幼保無償化に伴うもので、当人は本市に転入後、子を幼稚園に通わせたものの、申請の手続きが遅れ、その間は無償の対象外とされたらしく。本市が運営する窓口に問い合わせれば「遡及は可能」と言われたはずも実際は受理された日からとされて納得がいかぬ、と。出来「る」とされたものが出来「ぬ」とあらば鬱憤は余計に増幅される訳で、そりゃ御不満を抱かれるのも無理はなく。早速に担当課の説明を受けた。

国の通達によれば認定の開始日を申請日より前に遡及することは不可。つまりは申請日よりも前に園に通わせてはならぬ、それこそが原則であることに異論なく、昨今などは後申請に罪悪感のかけらもない保護者がいることも否定はせぬ。されど、この御時世とあらば申請側とてやむにやまれぬ事情に手続きが間に合わぬこともある訳で、そのへんは情状酌量、寛大な措置があっても...。

とこぼせばそのへんは本市独自に対応済、と担当。ならば、何故にこのような投稿が。より詳しい事情を伺いたくも投稿には四十代の男性以外に実名なく。当人の身近に議員が居ればもう少し丁寧な対応が図れたのではないか。未だ遠き存在として議会と有権者の距離感を憂いており。

(令和2年10月15日/2600回)

川崎市議会議員 山崎なおふみ

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